
柏市在住の40代女性が、朝の歩き出しに右踵の強い痛みを訴えて来院されました。朝起きてベッドから立ち上がり、最初の一歩を踏み出す瞬間に鋭い痛みが走り、その後もしばらくは足を引きずるようにして歩かざるを得ない状態です。時間が経つにつれて少しずつ和らぐものの、階段の下りや長時間の歩行など、踵に負担がかかる動作では痛みが再び強く現れます。
この患者様は以前、病院を受診しレントゲン検査を受けたところ、踵の骨に「骨棘(こつきょく)」と呼ばれる棘状の突起が確認されました。医師からは「特に手術などは必要なく、経過を観察して様子を見ましょう」と伝えられましたが、日常生活の中で痛みは改善せず、特に階段を下りる際には痛みを避けるために体を斜めに傾けて下りる癖がついてしまい、姿勢の歪みまで気になるようになっていました。
患者様ご本人も「このまま放っておくと歩けなくなるのではないか」と不安を抱き、今回当院へ相談に来られました。
検査
初回来院時の所見は以下の通りです。
①距骨下関節の可動制限を確認
足首の奥にある関節(距骨下関節)の動きが硬くなっており、歩行時の衝撃を十分に吸収できていない状態。
②後脛骨筋の緊張の高まり
足首から土踏まずを支える重要な筋肉である後脛骨筋が過度に緊張し、足裏への負担が増していた。
③踵直下の圧痛を確認
踵の真下を押すと強い痛みが出現。骨棘による物理的な刺激で炎症反応が起きていると推測される。
④歩行時の代償動作
踵の痛みを避けるために体を斜めに傾ける習慣が確認され、下半身全体、特に骨盤、股関節、膝周囲の筋群には緊張が見られた。
これらの検査結果から、単に足底が悪いだけでなく、下半身のバランスの低下から踵の痛みを慢性的に悪化させていることが分かりました。
治療
治療では、以下のようなアプローチを中心に行いました。
①足底腱膜へのグラストンテクニック
特殊なステンレス製の器具を用いて筋膜をリリースし、足底腱膜や周囲の軟部組織の柔軟性を回復。炎症反応のため、初回時は刺激が強すぎないように注意する。
②距骨下関節へのモビリゼーション
固まった関節の動きを丁寧に回復させる手技。歩行時の衝撃を分散できるようにし、踵への負担を軽減。
③後脛骨筋・膝窩筋・臀部筋群のリリース
伴う下半身の筋緊張に対し、リリース手技を行う。これにより足底へ間接的な緩和が生まれ、回復しやすくなる。
④フルスパインの骨格矯正
首、背中、腰に対し存在する歪に対しカイロプラクティック矯正を加える。体幹の安定は結果とし、足底への負担を軽減させる。
経過
治療を重ねる中で、患者様の症状は段階的に改善していきました。
1回〜3回
治療直後は痛みが軽減するものの、翌朝には再び痛みが出る状態。踵の炎症反応がまだ強い段階。
4回〜8回
朝の歩き始めの痛みが徐々に和らぎ、階段を下りる動作でも体を傾ける回数が減ってきた。
10回~12回
階段を真っ直ぐ下りられるようになり、朝起きてすぐの強い痛みもほとんど消失。歩行全体がスムーズになる。
解説
今回の症例は骨棘の伴う足底筋膜炎でしたが、骨棘が残ったとしても存在する足底や下半身の歪を回復させることにより、痛みが消失するケースは非常に多いです。疼痛そのものは骨棘から出ているわけではなく、炎症部位、もしくは周囲の緊張、癒着した筋肉から発生するケースが多く、その回復で骨棘からの負担も吸収されるためです。
痛みが落ち着いても歪は残る
病院では「経過観察」と言われることも少なくありませんが、放置してしまうと歩行動作が制限され、全身の姿勢バランスにも悪影響を及ぼし、膝や腰の痛みへとつながる危険性もあります。また、その経過観察で痛みが一時的に落ち着いたとしても、残された歪により再発したり、慢性的な腰痛へつながるケースも多く見受けられるため、注意を要します。
担当カイロプラクター:鷲見光一
応用理学士(医科学)
カイロプラクティック理学士
グラストンテクニック®GTクリニシャン
日本カイロプラクターズ協会(JAC)正会員
都内カイロプラクティック院にて副院長を務めた後、2017年に独立。国際基準のカイロプラクティックだけでなくグラストンテクニックのライセンスを取得し、物理療法を駆使した施術法を確立。臨床歴20年以上のオーストラリア政府公認カイロプラクター。
監修者:鷲見弘
取得国家資格/鍼灸師、柔道整復師(接骨)、あん摩マッサージ指圧師
慶応大学卒業後、人体や自然界への探求心によりカイロプラクティックの道へ進む。ユニバーサル・カイロプラクティック・カレッジ、 中央医療学園鍼灸学科を首席として卒業後、JSK鍼灸カイロプラクティックを運営。音楽家の腱鞘炎等の演奏障害を得意分野とし、多くの著名ピアニストの治療を担当。






