
柏市在住の40代女性が、右側の首に集中する強い痛みを主訴に来院されました。症状は2〜3週間ほど前から出現し、朝起きた時から首が重く、特に右を向こうとすると鋭い痛みが走る状態が続いていました。日常生活では洗濯物を干す際や車の運転時など、後方確認の動作が困難になり、日常動作にも支障を感じていたとのことです。
痛みがあまりにも強いため整形外科を受診し、画像検査の結果「ストレートネックが原因」と説明を受けました。頚椎牽引やマッサージによる治療を数回受けたものの、施術直後は楽になるものの数時間から翌日には元に戻ってしまい、改善を実感できなかったそうです。
また、痛み止めの内服薬も処方されていましたが、もともと薬に抵抗感があり、できる限り服用せずに根本的な改善を希望されていました。首の痛みが続くことで睡眠の質も低下し、このまま慢性化するのでは、という不安を感じて来院されました。
検査
① 姿勢検査
頭部が前方へ突出し、頚椎の前弯カーブが乱れたストレートネック傾向を確認。左右差が強く、特に右側上部頚椎周囲に緊張が集中していた。肩の高さにも左右差があり、右肩がわずかに挙上。
② 可動域検査(ROM)
頚部回旋動作に著しい制限を認め、特に右回旋時には可動域が大幅に低下。後方を振り向く動作が困難で、痛みを伴う。屈曲・伸展動作は比較的保たれているが、終末域で違和感あり。
③ 触診・筋緊張評価
上部頚椎周囲(後頭下筋群)および右側の頭板状筋・僧帽筋上部線維に強い圧痛を確認。筋膜の滑走不全があり、緊張が頚胸移行部まで連続的に広がっていた。
④ モーションパルペーション(関節可動検査)
上部頚椎(C1〜C2)に可動性の低下を認め、特に右側の関節圧迫が顕著。頚椎下部よりも、首の上部での関節機能低下が主因と判断。
⑤ 神経学的検査
上肢への放散痛、しびれ、感覚異常は認められず、神経学的異常所見はなし。疼痛の原因は構造的・関節性要因が主体と考えられる。
治療
① グラストンテクニック(IASTM)
右側上部頚椎周囲および頚胸移行部にかけて、金属ツールを用いたグラストンテクニックを実施。癒着した筋膜を解放し、筋肉の滑走性と血流改善を目的とする。
② 上部頚椎アジャストメント
首の回旋制限の主因である上部頚椎に対し、低刺激かつ的確なアジャストメントを実施。関節可動性を回復させ、左右差の是正を図る。
③ 頚胸部モビリゼーション
緊張が波及している頚胸移行部に対して、関節モビリゼーションを加え、首から背中への連動性を回復。
④ 生活動作の指導
スマートフォン使用時の目線の位置、就寝時の枕の高さと首の支え方について具体的に指導。痛みを避けるための代償姿勢を減らすよう助言。
経過
初回施術後
施術直後から右首の鋭い痛みが軽減し、回旋動作の可動域が改善。「振り向くのが怖くなくなった」との感想あり。
3週間後
時間の経過とともに多少の張り戻りはあるものの、痛みの強さは初診時の半分以下。睡眠中の首の違和感も軽減。
2か月後
日常生活で首の辛さを感じることはほぼなくなり、後方確認動作も問題なく行える状態まで回復。薬を服用せずに経過良好。
解説
今回の症例は、医療機関で「ストレートネック」と診断されたケースでしたが、実際の主な原因は上部頚椎の関節機能低下にありました。
上部頚椎(特にC1・C2)は、首の回旋運動の約7〜8割を担う非常に重要な部位です。この部分の関節が歪み、動きが制限されると、首を回す動作が困難になるだけでなく、後頭部から背中にかけて筋緊張が連鎖的に広がります。
ストレートネックという言葉は一括りにされがちですが、実際には
・上部頚椎由来
・中下部頚椎由来
・胸椎や肩甲骨の可動制限が影響しているタイプ
など、複数のパターンが存在します。
今回の患者さんのように、上部頚椎の圧迫が強いタイプでは、牽引やマッサージのみでは一時的な緩和に留まり、根本改善に至らないことが多く見られます。
関節そのものの動きを回復させ、癒着した筋膜を解放することで初めて、首全体の緊張が抜け、症状が安定していきます。
首の痛みが続くと、不安や睡眠障害を引き起こしやすくなります。ストレートネックと診断された場合でも、「どの部位が、なぜ動いていないのか」を正確に見極めることが、早期回復と再発防止の鍵となります。
担当カイロプラクター:鷲見光一
応用理学士(医科学)
カイロプラクティック理学士
グラストンテクニック®GTクリニシャン
日本カイロプラクターズ協会(JAC)正会員
都内カイロプラクティック院にて副院長を務めた後、2017年に独立。国際基準のカイロプラクティックだけでなくグラストンテクニックのライセンスを取得し、物理療法を駆使した施術法を確立。臨床歴20年以上のオーストラリア政府公認カイロプラクター。
監修者:鷲見弘
取得国家資格/鍼灸師、柔道整復師(接骨)、あん摩マッサージ指圧師
慶応大学卒業後、人体や自然界への探求心によりカイロプラクティックの道へ進む。ユニバーサル・カイロプラクティック・カレッジ、 中央医療学園鍼灸学科を首席として卒業後、JSK鍼灸カイロプラクティックを運営。音楽家の腱鞘炎等の演奏障害を得意分野とし、多くの著名ピアニストの治療を担当。






