
松戸在住の50代女性が、右ふくらはぎのしびれと足に力が入りにくい脱力感を主訴として来院されました。症状は約半年前から出現しており、特に寒さが厳しかった冬場に、冷え対策として厚手の靴下を何重にも重ねて履くようになってから自覚するようになったとのことです。患者さんはもともと冷え性が強く、足先の冷感を和らげる目的で締め付けのある靴下を長時間着用していました。
症状が強い時には、歩行中につまずきやすくなり、つま先を持ち上げにくい感覚が出ることもありました。ただし、腰痛や臀部痛はなく、安静時にも強い痛みはありません。病院でMRIなどの画像検査を受けたものの、骨の異常や椎間板ヘルニア、明らかな神経圧迫所見は見つからず、「様子を見るように」と言われ、特別な治療は受けていませんでした。
それでも症状は改善せず、「このまま足が動かなくなるのではないか」という不安を感じるようになり、原因をはっきりさせたいとの思いで来院されました。
検査
初回検査では、腰椎由来の神経障害よりも、下腿局所での神経・筋肉への影響が疑われました。特に筋緊張と関節可動性の低下が目立ちました。
①視診・触診検査
右下腿後面、とくに腓腹筋外側に限局した硬結を触知。圧迫によりしびれ感が増強し、筋肉の柔軟性低下が明らかでした。皮膚の色調や腫脹は軽度で、循環障害の兆候はありませんでした。
②関節可動域検査
足関節の背屈動作で右側に制限があり、左右差を認めました。脛腓関節の滑りが悪く、下腿全体の動きが硬くなっている印象でした。
③筋力検査
第3腓骨筋に軽度の筋力低下を確認。ただし、明らかな麻痺や著しい左右差はなく、日常生活動作はかろうじて保たれていました。
④神経学的検査
膝蓋腱反射・アキレス腱反射ともに正常。感覚検査でも神経根レベルの異常は見られず、腰椎由来の神経障害や椎間板ヘルニアの可能性は極めて低いと判断しました。
⑤姿勢・歩行評価
歩行時、右足の蹴り出しが弱く、足首を引き上げる動作がやや不十分。下腿の筋緊張による運動制限が影響していると考えられました。
治療
①モビリゼーション(脛腓関節)
脛腓関節の可動性改善を目的に、関節モビリゼーションを実施。関節の滑走を回復させ、下腿部での神経・血流の通りを改善するよう調整しました。
②グラストンテクニック
右腓腹筋外側の硬結部に対し、グラストンテクニックを使用。筋膜の癒着を解放し、局所的な圧迫を軽減することで、しびれと脱力感の改善を図りました。
③軟部組織への手技療法
下腿全体の筋緊張を調整し、足関節周囲の動きがスムーズになるよう補助的に手技を加えました。
④生活指導
締め付けの強い靴下を避けること、冷え対策は重ね履きではなく保温素材の使用に切り替えることを指導。下腿の血流を妨げない工夫を提案しました。
経過
2回目来院時
右足の脱力感は初回時の約半分まで軽減。歩行時の不安感も減り、つま先の引き上げがしやすくなったとのこと。
1カ月経過
しびれの出現頻度が減少し、日常生活で気になる場面が少なくなる。下腿の張り感も軽減。
3か月経過
しびれ・脱力感ともに消失。歩行や階段昇降も問題なく行えるようになり、症状は安定。
解説
今回の症例は、厚手の靴下による下腿部での末梢神経圧迫が原因と考えられる比較的珍しいケースでした。寒さ対策として行っていた靴下の重ね履きが、結果的に膝下で神経や筋肉を長期間圧迫し、しびれや脱力感を引き起こしていました。
腰痛や臀部痛を伴わず、画像検査でも異常が見つからない場合、原因が腰椎にないケースも少なくありません。今回のように、手足の末梢部で神経が圧迫されていると、違和感やしびれが長期間続くことがあります。患者さん自身の「靴下を履いてから発症した」という訴えが、原因を特定する重要な手がかりとなりました。
しびれ症状がある場合、「年齢のせい」「様子見」で済ませてしまいがちですが、生活習慣や身につけているものが原因となっていることもあります。早期に適切な評価と対応を行うことで、症状の改善と不安の解消につながります。
担当カイロプラクター:鷲見光一
応用理学士(医科学)
カイロプラクティック理学士
グラストンテクニック®GTクリニシャン
日本カイロプラクターズ協会(JAC)正会員
都内カイロプラクティック院にて副院長を務めた後、2017年に独立。国際基準のカイロプラクティックだけでなくグラストンテクニックのライセンスを取得し、物理療法を駆使した施術法を確立。臨床歴20年以上のオーストラリア政府公認カイロプラクター。
監修者:鷲見弘
取得国家資格/鍼灸師、柔道整復師(接骨)、あん摩マッサージ指圧師
慶応大学卒業後、人体や自然界への探求心によりカイロプラクティックの道へ進む。ユニバーサル・カイロプラクティック・カレッジ、 中央医療学園鍼灸学科を首席として卒業後、JSK鍼灸カイロプラクティックを運営。音楽家の腱鞘炎等の演奏障害を得意分野とし、多くの著名ピアニストの治療を担当。






