南流山在住の60代女性が右鼠径部の痛みを訴え、来院されました。およそ3ヶ月前から痛みは徐々に悪化してきており、最近では長時間歩行を続けることが難しくなっています。特に歩き始めに強く痛みが出るのが特徴で、動き始めること自体が負担になっている様子でした。以前から時折痛みを感じることはあったそうですが、整形外科に行くべきか、整体に行くべきか、あるいはマッサージで良くなるものなのか判断がつかず、どの医療機関を受診すれば良いのか分からないまま過ごしていたとのことでした。
検査
今回の初診時検査において確認された所見は以下の通りです。
①股関節の可動域制限
・右股関節の長軸方向への可動制限
・右股関節を深く曲げる際に鼠径部に痛みが再現される
②筋肉の緊張状態
・中殿筋・大殿筋といった股関節を安定させる重要な筋群に強い緊張
・腰部を支える腰方形筋にまで緊張が波及し、局所的な問題にとどまらず体幹全体に影響が出ている事を確認
③腰部の可動
・腰部、体幹の前屈動作を行うと、右鼠径部に鋭い痛み
上記の所見から股関節内の圧迫ストレスが強くなっている事が考えられるが、軟骨や関節包への負担が長期間に渡っており、局所的な炎症や一時的な筋疲労だけでなく構造的な関節障害の存在、特に加齢に伴う変形性股関節症のリスクを考慮する必要があると判断された。また股関節自体の問題だけでなく、腰や骨盤の機能不全も痛みに関与している可能性は高い。
治療
検査結果を踏まえ、以下のなアプローチを行う。
①股関節周囲筋群へのグラストンテクニック
専用の器具を用いて筋膜の癒着や硬結を解きほぐし、血流改善と柔軟性回復を図る。
特に中殿筋・大殿筋の緊張を緩和し、関節を支えるバランスを整えることを目的とした。
②股関節へのモビリゼーション
関節の可動域を回復させるため、持続的で安全な徒手的操作を実施。
圧迫ストレスの分散と関節包の柔軟化を促進し、動作時の痛みを軽減する狙いがある。
③胸腰部へのアジャストメント
股関節単独ではなく、骨盤・腰椎との連動を改善するため胸腰部にも調整を加えた。
姿勢改善と体幹の安定性を高めることで、股関節への負担を軽減。
治療は段階的に進められ、症状の強さや反応に合わせて刺激量を調整しながら施術を行った。
経過
治療を開始してから少しずつ症状は軽快し、15回、3か月程度の施術を終える頃には、右鼠径部の痛みは大幅に落ち着いた。特に問題となっていた長時間の歩行においても、以前のように強い痛みを感じることなく無理のない範囲で続けられるようになる。歩き始めの動作もスムーズになり、日常生活における支障は著しく減少。これにより外出や活動を再開できるようになった。
解説
今回のケースでは、加齢に伴う関節の変化や筋肉の硬直が重なり、慢性的な股関節の圧迫と筋緊張が痛みを発生させていたと考えられます。病変は股関節にとどまらず、腰部の筋肉や体幹のバランスも乱れていたため、トータル的な施術が必要とされていました。また他の部位の施術が結果として、股関節の緊張を緩和し、大きく回復に役立ったと言えます。しかしながら変形性股関節症は例え痛みが回復しても変形は残っているため再発するリスクが高く、長期に渡りメンテナンス治療が必要な疾患となります。
無理は禁物の変形性股関節症
変形性股関節症は特に女性に多く見られ、軟骨の摩耗や関節の変形によって痛みや可動域制限が生じる疾患です。進行が進むと関節の癒着や硬化が強くなり、一般的なマッサージや矯正だけでは改善しにくい傾向があり、表面的な処置では十分な効果が得られません。また無理なストレッチや歩行エクササイズは関節の圧迫を強め、より痛みを強くするケースも多く見受けられるため注意が必要です。
担当カイロプラクター:鷲見光一
応用理学士(医科学)
カイロプラクティック理学士
グラストンテクニック®GTクリニシャン
日本カイロプラクターズ協会(JAC)正会員
都内カイロプラクティック院にて副院長を務めた後、2017年に独立。国際基準のカイロプラクティックだけでなくグラストンテクニックのライセンスを取得し、物理療法を駆使した施術法を確立。臨床歴20年以上のオーストラリア政府公認カイロプラクター。
監修者:鷲見弘
取得国家資格/鍼灸師、柔道整復師(接骨)、あん摩マッサージ指圧師
慶応大学卒業後、人体や自然界への探求心によりカイロプラクティックの道へ進む。ユニバーサル・カイロプラクティック・カレッジ、 中央医療学園鍼灸学科を首席として卒業後、JSK鍼灸カイロプラクティックを運営。音楽家の腱鞘炎等の演奏障害を得意分野とし、多くの著名ピアニストの治療を担当。






