
柏市に在住の40代女性が、右手首の強い痛みを訴えて来院されました。痛みは数ヶ月前から徐々に始まり、当初は家事の最中に違和感を覚える程度でした。しかし、時間が経つにつれて症状は悪化し、最近ではデスクワーク中にマウスを持つことさえ辛い状態になっています。特に長時間のパソコン作業や、荷物を持ち上げる動作で強く痛みが出てしまい、仕事や日常生活に大きな支障をきたしていました。
整形外科では「腱鞘炎」と診断され、湿布や消炎鎮痛剤の処方を受けたり、手首を安静に保つためにサポーターを装着しています。しかし、数週間から数ヶ月にわたってこれらの処置を続けても、症状は一時的に軽くなるだけで根本的には改善せず、再び痛みが戻ってしまうという状態が続いていました。
カイロプラクティック検査所見
初診時に詳細な検査を行ったところ、以下のような問題が確認されました。
1.手根骨の月状骨の前方変位
手首を構成する8つの小さな骨のひとつである「月状骨」が、正常な位置から前方へズレている状態が確認されました。この骨は手首の中央に位置し、手のひら側や腕の骨との連動に重要な役割を果たします。ここにわずかな歪みや可動性の低下が起こるだけで、腱や靭帯に負担が集中し、炎症や痛みを引き起こすことがあります。
2.長掌筋や橈側手根屈筋の癒着
前腕の内側、手のひらにかけて伸びている筋肉に癒着が見られました。手首を曲げたり握ったりする際に大きく関与する筋肉であり、過度の使用や不適切な使い方が続くと、筋膜同士が滑らかに動かなくなり、硬さや痛みを発生させます。特にデスクワークでの反復動作が長期間続くと、この癒着は強まりやすい傾向にあります。
3.腱鞘炎の整形外科テストで陽性反応
親指をグーの中に入れて小指側に手首を倒す検査を行ったところ、親指の根本に強い疼痛が再現されました。これはドケルバン病などの腱鞘炎に特徴的な反応であり、臨床的にも腱鞘炎の存在が明らかになりました。
4.手関節後外方の炎症反応
親指側の手首の関節部分を触診すると、圧痛と軽度の腫れが確認されました。炎症反応はまだ続いており、手首にストレスがかかるたびに再び炎症が助長されていると考えられます。
治療
今回の症例に対しては、根本的な原因である関節の歪みと筋肉・腱の癒着を解消することを目的に、以下の治療を組み合わせて行いました。
・月状骨へのモビリゼーション
ズレていた月状骨を正しい可動域に戻すため、手根骨に対して繊細な矯正を加え、関節の動きを回復させました。
・前腕屈筋群へのアプローチ
長掌筋や橈側手根屈筋に対して、グラストンテクニック(特殊な器具を用いて癒着を剥がす手技)を行い、筋膜の滑走性を改善しました。これにより、筋肉や腱への余計なストレスを軽減します。
・脊柱や肩甲帯への矯正
この様なケースでは例え手の問題でもその緊張は肩甲骨や脊柱にまで悪影響を及ぼします。また頸部や胸椎へのカイロプラクティック矯正は神経の働きを促進させ、腱鞘炎等の手首周りの疼痛回復に役立ちます。
こうした施術を組み合わせた結果、初回の治療後に痛みは3~4割改善。その後も定期的な施術を継続することで炎症反応は徐々に鎮まり、約3か月で仕事中も痛みを気にせず作業できる状態にまで回復しました。
解説
今回の腱鞘炎は、単なる使い過ぎではなく「手根骨の歪み」が大きな原因となっていました。関節の歪みによって周囲の腱や筋肉に異常な負担がかかり、その結果として炎症が繰り返されていたようです。歪みを正さずに表面的な炎症だけを抑えても再発を繰り返す可能性は高く、腱鞘炎は一般的に「安静にしていれば治る」と考えられがちですが、関節にズレや可動制限がある場合は湿布やサポーターだけでは根本的な改善につながりません。 今回のようにカイロプラクティック的なアプローチで関節の可動性を回復させると同時に、それに伴う肩甲骨や脊柱のバランス改善は全身の回復力を促進させ、より持続的な改善が期待出来ると言えます。
担当カイロプラクター:鷲見光一
応用理学士(医科学)
カイロプラクティック理学士
グラストンテクニック®GTクリニシャン
日本カイロプラクターズ協会(JAC)正会員
都内カイロプラクティック院にて副院長を務めた後、2017年に独立。国際基準のカイロプラクティックだけでなくグラストンテクニックのライセンスを取得し、物理療法を駆使した施術法を確立。臨床歴20年以上のオーストラリア政府公認カイロプラクター。
監修者:鷲見弘
取得国家資格/鍼灸師、柔道整復師(接骨)、あん摩マッサージ指圧師
慶応大学卒業後、人体や自然界への探求心によりカイロプラクティックの道へ進む。ユニバーサル・カイロプラクティック・カレッジ、 中央医療学園鍼灸学科を首席として卒業後、JSK鍼灸カイロプラクティックを運営。音楽家の腱鞘炎等の演奏障害を得意分野とし、多くの著名ピアニストの治療を担当。






