
松戸在住の50代男性。休日に一日中横になって過ごした翌日から腰痛が悪化し来院されました。既往歴として椎間板ヘルニアがあり、これまでも疲労や長時間の同一姿勢後に腰痛を自覚することはありましたが、今回は特別な動作や負荷をかけた自覚がないにもかかわらず症状が増強した点に不安を感じていました。発症から3日が経過し、強い疼痛はやや軽減したものの、朝ベッドから起き上がる瞬間に腰部へ「ミシミシ」とした軋むような違和感が出現。体幹前屈時には可動域制限とともに腰が抜けそうな不安定感を伴い、長時間のうつ伏せ姿勢も困難な状態でした。下肢への放散痛やしびれは認められませんでした。
検査
右仙腸関節を中心に可動性低下を確認。腰椎から骨盤にかけての連動性が低下し、局所的な筋緊張が顕著に認められた。
視診・触診検査
右殿筋群(大殿筋・中殿筋)および脊柱起立筋に板状硬結と圧痛を確認。筋緊張が強く、弾力性の低下がみられた。
関節可動域検査
体幹屈曲時に可動域制限があり、終末域で不安定感を訴える。伸展時にも軽度制限を認め、可動の滑らかさが欠如。
モーションパルペーション(可動触診)
胸腰移行部および右仙腸関節でスプリング低下を確認。関節の遊びが減少し、ロック傾向を示す。
姿勢検査
骨盤後傾傾向がみられ、腰椎前弯の減少を確認。長時間臥位後も筋緊張が残存している状態。
神経学的検査
SLRテストを含む整形外科的検査は陰性。知覚・反射異常なし。神経根症状は認められず、主因は筋・関節機能障害と判断。
治療
グラストンテクニック
殿筋群および脊柱起立筋に対し施術を行い、筋膜の癒着を除去。血流促進と組織滑走性の改善を図る。
モビリゼーション(関節調整)
胸腰移行部および腰椎に対し可動域改善を目的とした持続的他動運動を実施。脊柱全体の連動性を回復。
アジャストメント(脊椎矯正)
右仙腸関節に対し矯正を行い、骨盤アライメントを整えることで体幹支持性を向上。股関節への操作を追加し、骨盤―下肢間の協調性を改善。腰部への代償負荷を軽減した。
経過
1週間経過:起き上がり時の強い違和感が軽減。腰部の緊張感が緩和し可動がやや改善。
2週間経過:体幹前屈時の不安定感が減少。日常生活動作での恐怖感が軽減。
6週間経過:朝の軋むような違和感は消失。可動域はほぼ正常範囲まで回復。
現在は再発予防およびヘルニア既往のメンテナンス目的で2週間に1回の施術を継続中。
解説
本症例は椎間板ヘルニアそのものの急性増悪ではなく、既往歴により慢性的に高まっていた筋緊張が背景となり発症した機能性腰痛と考えられます。長時間の臥位により筋ポンプ作用が低下し、循環不良と軽度の関節拘縮が生じた結果、仙腸関節周囲へ負担が集中した可能性が高い状態でした。
椎間板ヘルニア既往者は、疼痛が消失している時期でも深層筋の防御性収縮や筋膜癒着を抱えていることが少なくありません。そのため日常的には問題とならない軽微な刺激でも、関節可動域のわずかな破綻を契機に急性腰痛を発症することがあります。
重要なのは、症状が出ていない時期から関節の滑走性と筋柔軟性を維持することです。定期的なカイロプラクティックによるメンテナンスは、骨盤・腰椎のアライメントを安定させ、再発リスクを低減する有効な予防戦略となります。
担当カイロプラクター:鷲見光一
応用理学士(医科学)
カイロプラクティック理学士
グラストンテクニック®GTクリニシャン
日本カイロプラクターズ協会(JAC)正会員
都内カイロプラクティック院にて副院長を務めた後、2017年に独立。国際基準のカイロプラクティックだけでなくグラストンテクニックのライセンスを取得し、物理療法を駆使した施術法を確立。臨床歴20年以上のオーストラリア政府公認カイロプラクター。
監修者:鷲見弘
取得国家資格/鍼灸師、柔道整復師(接骨)、あん摩マッサージ指圧師
慶応大学卒業後、人体や自然界への探求心によりカイロプラクティックの道へ進む。ユニバーサル・カイロプラクティック・カレッジ、 中央医療学園鍼灸学科を首席として卒業後、JSK鍼灸カイロプラクティックを運営。音楽家の腱鞘炎等の演奏障害を得意分野とし、多くの著名ピアニストの治療を担当。






