
松戸在住の40代女性。右肩の痛みを主訴に来院されました。特に横向きで寝た際に右肩へ強い痛みが出るとのことで、睡眠中に右側を向くと痛みで目が覚めてしまう状態でした。就寝時は仰向けで眠りにつくものの、寝返りで右側臥位になると肩関節前方から肩の奥にかけて鋭い痛みが出現するとのことでした。
日常生活では腕を上げる動作でも違和感を感じており、特に肩を外側へ上げる動作や背中側へ回す動作で可動域の制限を自覚していました。強いしびれや腕への放散痛は認めませんでしたが、肩関節周囲には慢性的な張り感が存在していました。
問診を進めると、以前は就寝前に右側を下にして横向きの姿勢でテレビを視聴する習慣があったとのことでした。右肩を前方へ巻き込むような姿勢で長時間過ごしていたことが多く、その姿勢が習慣化していた可能性が考えられました。現在はその習慣をやめているものの、肩関節周囲の違和感や痛みは徐々に強くなり、特に夜間の疼痛として現れるようになったため来院されました。
検査
姿勢検査
右肩は前方へ巻き込むような姿勢(巻き肩)が認められ、肩甲骨は外転・前傾位を示していた。
静的触診
右肩甲骨の烏口突起周囲に明確な圧痛を確認。小胸筋の強い筋硬結を認めた。
筋緊張検査
大胸筋・小胸筋の短縮傾向があり、肩関節前方組織の緊張が強い状態。
関節可動域検査
肩関節外転は約120度で制限。終末域で疼痛が出現。
肩甲骨運動検査
肩甲骨の後傾および内転の可動性が低下。肩甲上腕リズムの乱れを確認。
モーションパルペーション
肩甲骨間部の胸椎(特に中部胸椎)の弾力性低下。正常な胸椎後弯の柔軟性が減少していた。
神経学的検査
上肢への放散痛、知覚異常、筋力低下などの神経症状は認められず。
治療
胸椎アジャストメント
肩甲骨間部の胸椎へ矯正を行い、脊柱の可動性と弯曲の回復を図った。
肩甲骨モビリゼーション
肩甲骨の内転・後傾運動を誘導し、肩甲胸郭関節の可動性を改善。
肩関節モビリゼーション
肩関節包の滑走性を改善するため外転・外旋方向の関節運動を実施。
グラストンテクニック
烏口突起周囲の軟部組織癒着に対して施術し、筋膜の滑走改善を図った。
小胸筋ストレッチ
短縮している小胸筋に対して持続的ストレッチを行い、肩前方の緊張を緩和。
経過
・1〜3回目:夜間痛は徐々に軽減。肩の張り感が減少し、横向き時の痛みがやや緩和。
・4〜6回目:肩関節の外転可動域が改善。日常生活動作での痛みが大幅に減少。
・6回の施術終了時点で疼痛は約8割改善。
・3ヶ月後の再評価では肩関節可動域は正常範囲まで回復し、横向きでの睡眠時痛も消失した。
解説
本症例は年齢的にも、いわゆる五十肩(肩関節周囲炎)に類似した症状を呈していましたが、発症の背景には日常生活の姿勢習慣が大きく関与していると考えられました。
特に「横向きでテレビを見る」という習慣は、肩関節を内側へ巻き込む姿勢を長時間維持することになります。この姿勢は肩甲骨を外側へ引き出し、肩関節を前方へ引き込むため、いわゆる巻き肩姿勢を形成します。
巻き肩が続くと、小胸筋や大胸筋が短縮し、肩関節前方組織の緊張が強まります。その結果、肩甲骨の正常な運動が制限され、肩関節の可動域低下や関節包の滑走障害が生じやすくなります。さらに加齢に伴う肩関節周囲組織の柔軟性低下が加わることで、今回のような夜間痛や可動域制限を伴う肩関節障害を引き起こす可能性があります。
このような症例では、肩関節だけを局所的に治療するのではなく、胸椎や肩甲骨の動きも含めた全体的な機能回復が重要になります。胸椎の可動性が改善すると肩甲骨の動きが正常化し、それに伴って肩関節への負担も軽減されます。
また、日常生活での姿勢習慣を見直すことも再発予防には不可欠です。長時間の横向き姿勢や肩を前方へ巻き込む姿勢を避け、胸を開いた姿勢を意識することで肩関節への慢性的な負担を軽減することができます。
適切な施術と生活習慣の改善を組み合わせることで、本症例のような肩関節障害は比較的短期間で改善が期待できます。
担当カイロプラクター:鷲見光一
応用理学士(医科学)
カイロプラクティック理学士
グラストンテクニック®GTクリニシャン
日本カイロプラクターズ協会(JAC)正会員
都内カイロプラクティック院にて副院長を務めた後、2017年に独立。国際基準のカイロプラクティックだけでなくグラストンテクニックのライセンスを取得し、物理療法を駆使した施術法を確立。臨床歴20年以上のオーストラリア政府公認カイロプラクター。
監修者:鷲見弘
取得国家資格/鍼灸師、柔道整復師(接骨)、あん摩マッサージ指圧師
慶応大学卒業後、人体や自然界への探求心によりカイロプラクティックの道へ進む。ユニバーサル・カイロプラクティック・カレッジ、 中央医療学園鍼灸学科を首席として卒業後、JSK鍼灸カイロプラクティックを運営。音楽家の腱鞘炎等の演奏障害を得意分野とし、多くの著名ピアニストの治療を担当。






