【症状】
松戸市に住む50代男性が首から背中の痛みを訴え、来院されました。この痛みは何ヶ月か前から始まり、最初は首の動きが少し悪い程度でした。しかし最近は、首を後ろに倒すと肩甲骨の内側に痛みを感じます。この痛みで仕事中、集中力が途切れやすく趣味のゴルフも打ち込めません。整形外科でレントゲンの撮影をしたところ、骨に骨折などの異常は無いが骨と骨の間は狭くなっており、湿布を貼って様子を見るように言われています。それ以外にはリハビリなど、主だった治療は受けていないとの事です。
先週はあまりにも辛かったためマッサージへ行きましたが、直後は良いものの元に戻ってしまいます。長めにお風呂に入ったり、首を回したりもしますが一向に痛みは変わりません。また最近は痛みのため背中を起こしにくく、猫背が強くなった気がします。
【検査】
首の動きは全体的に制限はあるが、特に上を向いた時、左右を向いた時の角度が少ない。上を向いた時は最終段階で右首から肩に鈍い痛みが生じ、緊張のためか左右の肩は上がっている。
骨と骨の間が狭いと整形外科で言われていたため、ヘルニアの検査を行ったが知覚や筋力など異常は見られない。
首と頭部の境目にあたる第1頚椎には関節の歪みが存在する。第1頚椎は首を捻る動作で主要となる働きをするが、この歪みにより上記にある左右向いた時の角度制限が生まれた可能性は高い。
第1頚椎の歪みの結果、生じている可能性もあるが後頭部に付着する筋膜には癒着が広い範囲に見られる。
首の真ん中あたり、第5頚椎周囲に圧を加えると鈍い痛みが生じる。第1頚椎の歪み、動きの低下により第5頚椎は代償的に動きが亢進しやすい。また年齢からこの部位には椎間板や関節の変形が出やすく、扱いはソフトに行うべきである。
背中の真ん中に存在する脊柱起立筋は緊張が強く、筋肉の線維も癒着しゴリゴリとした触感が得られる。3ヶ月前に発症した痛みではあるが、癒着の程度から考慮すると以前から緊張は継続されていたと思われる。
肩甲骨の間、痛みの感じている周りは広い範囲に渡り関節の弾力性が低下している。痛みによる緊張もあるが、年齢から来る関節や筋肉の硬化による影響は強い。
【施術】
治療では最初に干渉低周波やホットパックを用い、首から背中の筋肉を緩和させる。その後、肩甲骨の間の胸椎にカイロプラクティックによる矯正を加え、首から背部に存在する筋肉の癒着に対し、グラストンテクニックを行う。首の筋肉が十分に緩んだ事を確認した後、歪みのある第1頚椎を矯正。更に初回時は肩甲骨に対しても、カイロプラクティックによる操作を施した。2回目以降は物理療法後、首から骨盤まで残された筋肉の癒着と関節の歪みを、カイロプラクティックの矯正とグラストンテクニックで改善。
【経過】
初回施術後、痛みは残っていたが翌朝の調子は良かったとの事。その後、仕事や日常生活で徐々に戻りはするがマッサージの時より持ちは良い。回数を重ねるごとに改善に向かい、10回経過した頃から上を向いた時の痛みはほとんど感じなくなる。その時点で術者の触知としては癒着は残されていたが、それも安定的に解放に向かう。3ヶ月後には疲労感以外の自覚症状は消失。
【解説】
今回のケースは年齢が50歳ということもあり、筋肉や関節の変形性疾患を考慮し治療を進めました。中年期は椎間板や関節軟骨の変形が進行しやすく、病院ではレントゲンで骨と骨の間が狭いと言われている事から無理な施術は痛みを悪化させる場合もあり、注意を要します。レントゲンでは椎間板や軟骨、神経の状態は確認しづらく明確に何が生じているのかは判断がつきません。重要な事は、例え椎間板ヘルニアや変形性関節症、脊柱管狭窄症等があっても安全な施術法を選択する事です。