
北小金在住の40代女性が、顎のだるさと口の開けづらさを訴えて来院されました。症状は数年前から断続的に繰り返しており、特に疲労が溜まった時や精神的ストレスが強い時に悪化する傾向があります。当初は食事の際に顎が「重い」「だるい」と感じる程度でしたが、徐々に開口動作が制限されるようになり、最近では大きなあくびや硬い食べ物を噛むことが困難になってきました。
歯科では顎関節症と診断され、マウスピースを3ヶ月使用していますが、症状の改善はほとんど見られませんでした。マウスピース装着中は「一時的に違和感が減ることはあるものの、顎のだるさは根本的に変わらない」とのことです。日常生活では、食事や会話の際に口を大きく開けると左顎周囲に痛みやだるさが生じ、徐々に肩や首にも張り感が広がることがあります。特に朝起床時や夜間には顎がこわばり、長時間の会話や食事では疲労感が増します。さらに慢性的な肩こりや後頭部の張りもあり、頭痛や首の疲労感が顎の症状と連動していることが患者様自身にも分かるとの事です。
検査
初回来院時の検査所見は以下の通りです。
① 左咬筋の癒着
触診により左咬筋(顎の下部後方に存在する筋肉)に強い硬結と癒着を確認。咬筋の筋膜の滑走が制限されており、開口動作時に顎関節の動きがスムーズでない状態。
② 開口時の関節突起運動の遅れ
特に左側関節突起の前方への運動が遅れており、左右差が顕著。これにより口の開きが制限を受けている。
③ 上部頚椎の機能障害
第一・第二頚椎の可動性が低下。頚椎上部の硬直が後頭骨から顎の動きを制限し、頭部・顎・首の連動が阻害されている。
④ 後頭下筋群の癒着
頭の付け根の筋肉に硬結があり、筋膜を介して側頭筋まで緊張が波及。
これらの所見から、症状は単なる顎関節症ではなく、首や頭部の歪み、筋膜の癒着、咬筋・側頭筋の硬直など複合的要因が関与していることが分かりました。
治療
治療は顎関節の可動域改善と首・頭部のバランス回復を目的に、以下のアプローチを中心に行いました。
⓵顎関節へのモビリゼーション
長軸方向、関節が開く方向の左顎関節の制限に対し、関節音の伴わないカイロプラクティック操作を加える。
②咬筋・側頭筋へのグラストンテクニック
咬筋の特に下顎骨の下端に存在する癒着に対しステンレスの器具を用いて筋膜リリースを施す。
⓷上部頚椎へのアジャストメント
C1に対する関節音の伴うカイロプラクティックの矯正を加える。
④後頭下筋群へのリリース
首と後頭部の境目に存在する筋肉に徒手で緩和操作を行う。
経過
初回施術後
顎のだるさが軽減し、口の開けやすさが改善
3回目以降
痛みは約5割改善、開口制限はまだ残された状態。
5回目以降
会話や食事での顎の疲労感が軽くなり、肩・首の張りも減少
3か月以降
マウスピース使用時よりも自然に口を開けられるようになり、日常生活での不快感がほぼ解消
解説
噛み合わせ由来の症例や食いしばりによる歯の保護を目的とした場合、マウスピースは有効です。しかし、こうしたケースはむしろ少数であることが多いと考えられます。顎関節症の多くは、顎単独の問題だけではなく、首や肩、頭部の姿勢や筋膜連動が深く関与しています。顎だけでなく、首や肩、後頭部までの一帯の緊張や可動性を正確に把握し、必要に応じてカイロプラクティック処置を加えることで、症状が回復に向かうケースは非常に多く見られます。
顎を開くときの土台となる後頭下筋群
今回の症例では特に後頭部の筋緊張が目立っており、その影響で適切な開口動作が妨げられていた可能性が高いです。顎が開く際には、本来、後頭部の筋群が頭部を安定させる土台として機能します。しかし、この機能に異常が生じると、顎関節に不自然な負荷がかかり、結果として痛みや開口制限が生じることがあります。
このように、顎関節症と首の歪みや後頭部の緊張との関係性は非常に密接であり、顎単独の治療だけでは改善しにくいことがあります。顎の痛みや開口制限が慢性的に続く場合は、首・肩・後頭部を含めた全体的な評価とアプローチが重要であり、症状の改善だけでなく再発予防にもつながるのです。
担当カイロプラクター:鷲見光一
応用理学士(医科学)
カイロプラクティック理学士
グラストンテクニック®GTクリニシャン
日本カイロプラクターズ協会(JAC)正会員
都内カイロプラクティック院にて副院長を務めた後、2017年に独立。国際基準のカイロプラクティックだけでなくグラストンテクニックのライセンスを取得し、物理療法を駆使した施術法を確立。臨床歴20年以上のオーストラリア政府公認カイロプラクター。
監修者:鷲見弘
取得国家資格/鍼灸師、柔道整復師(接骨)、あん摩マッサージ指圧師
慶応大学卒業後、人体や自然界への探求心によりカイロプラクティックの道へ進む。ユニバーサル・カイロプラクティック・カレッジ、 中央医療学園鍼灸学科を首席として卒業後、JSK鍼灸カイロプラクティックを運営。音楽家の腱鞘炎等の演奏障害を得意分野とし、多くの著名ピアニストの治療を担当。






