
柏市にお住まいの40代女性の方が、右手首の慢性的な痛みを訴えて当院を受診されました。
この痛みは数ヶ月前から徐々に始まり、時間の経過とともに悪化。特に最近では、日常的に行っているデスクワーク中のマウス操作が非常につらく、仕事に大きな支障をきたすようになっていました。
近隣の病院にて診察を受けた結果、「腱鞘炎」と診断され、処置としてサポーターの装着や湿布の使用などの一般的な保存療法が行われていました。しかしながら、これらの対処では症状に大きな改善は見られず、痛みや不快感は継続。むしろ、日を追うごとに手首の使いづらさが増してきたとのことです。
また、ご自身でもインターネットで腱鞘炎に効果的とされるストレッチやエクササイズなどを調べて実践されていたそうですが、痛みは和らぐことなく、場合によっては運動後に悪化しているような感覚もあったとお話しされていました。
仕事を休むことが難しい状況で、どうにか改善を図りたいという思いから、当院を訪れております。
【カイロプラクティック検査】
初診時の検査において、右手の手根骨のひとつである月状骨(げつじょうこつ)に、前方変位(骨が本来の位置より前側にズレている状態)が認められました。このズレにより、手首を通過する主要な腱、具体的には長掌筋(ちょうしょうきん)や橈側手根屈筋(とうそくしゅこんくっきん)の部分に癒着(組織同士がくっついて滑走性が低下している状態)が生じているのが確認されました。
整形外科的な徒手テストでは腱鞘炎の陽性反応が出ており、特に手関節の後外側(手の甲の小指側付近)には炎症所見(圧痛・腫れ)がはっきりと見られました。
【治療】
治療では、まず変位している月状骨に対し、モビリゼーション(可動性を取り戻すための徒手操作)を行いました。これは関節を丁寧に動かしながら、本来の位置に戻していく手技です。
さらに、手関節の前面にある筋肉群や腱の付着部に対しては、グラストンテクニックを使用しました。これは特殊なステンレス製の器具を用いて、筋膜や腱に対してリリース(解放)を行う施術方法であり、癒着した組織の柔軟性と血流を改善する効果が期待されます。
これらの施術により、初回の治療だけで痛みは約50〜60%の改善が見られ、手首の可動域や使いやすさも回復傾向を示しました。その後も数回の施術を継続し、およそ1ヶ月半後には、日常生活や仕事中に痛みを感じることがほとんどなくなり、快適に業務に取り組めるまでに回復されました。
【解説】
今回の腱鞘炎の根本的な原因は、手根骨の歪み(特に月状骨の前方変位)でした。このような骨の機能異常があると、周囲を通過する腱や筋肉に余分なストレスがかかりやすくなり、腱鞘炎や滑膜の炎症を引き起こすことがあります。
一般的に、腱鞘炎に対しては湿布やサポーターの使用、安静といった処置が推奨されますが、今回のように骨格の歪みや腱の癒着が根底にある場合、こうした対処療法だけでは改善が難しいケースも多く見られます。
腱鞘炎がなかなか良くならない、あるいは一時的に良くなってもすぐに再発する場合、手首だけでなく肘や肩、首といった関連関節の機能異常も関係していることもあります。これらを正しく評価・調整することで、より根本的な改善へとつながります。
当院では、カイロプラクティックによる関節調整と、グラストンテクニックなどの軟部組織へのアプローチを組み合わせることで、症状の根本的改善を目指しています。「どこへ行っても改善しない、元に戻ってしまう」、このようなお悩みをお持ちの方は是非一度、ご相談下さい。
担当カイロプラクター:鷲見光一
応用理学士(医科学)
カイロプラクティック理学士
グラストンテクニック®GTクリニシャン
日本カイロプラクターズ協会(JAC)正会員
都内カイロプラクティック院にて副院長を務めた後、2017年に独立。国際基準のカイロプラクティックだけでなくグラストンテクニックのライセンスを取得し、物理療法を駆使した施術法を確立。臨床歴20年以上のオーストラリア政府公認カイロプラクター。
監修者:鷲見弘
取得国家資格/鍼灸師、柔道整復師(接骨)、あん摩マッサージ指圧師
慶応大学卒業後、人体や自然界への探求心によりカイロプラクティックの道へ進む。ユニバーサル・カイロプラクティック・カレッジ、 中央医療学園鍼灸学科を首席として卒業後、JSK鍼灸カイロプラクティックを運営。音楽家の腱鞘炎等の演奏障害を得意分野とし、多くの著名ピアニストの治療を担当。






