
新松戸在住の40代女性が、左右の肩の痛みと腕のだるさを訴えて来院されました。症状は1週間前から始まり、当初は右側の首から肩にかけての鈍い痛みを感じる程度でした。しかし数日経つうちに、今度は左肩の動きが制限され、特に腕を上げにくい状態になっていきましす。その後、両腕にかけて重だるさが広がり、仕事や家事の際にも違和感が続くようになったとのことです。
患者様は職業が看護師ですが、配属部署では外来看護やデスクワークが中心で、1日の多くをパソコン業務や書類作成に費やしています。慢性的な肩こりは以前からありましたが、今回のように左右同時に症状が出たのは初めてです。市販の湿布や鎮痛剤を試すほか、近所のマッサージにも行きましたが、症状は改善せず。病院でレントゲンや各種検査を受けたものの「特に異常なし」と言われ、自分でも肩こりなのか、いわゆる四十肩(肩関節周囲炎)なのか判断がつかず、不安を感じての来院でした。
【診察・評価】
触診の結果、右側では上部僧帽筋に著しい緊張があり、押圧で再現痛が確認されました。これは首から肩にかけての負担が長期間蓄積しているサインです。左側では棘上筋に圧痛と硬結があり、肩関節の外転90度付近で肩峰部に痛みが出現。さらに左右の前腕屈筋群にも張りが認められ、上肢全体の筋緊張が高まっていることが分かりました。
可動域テストでは、首を左に倒すと右肩に突っ張り感が出る一方、左肩は外転動作で制限があり、痛みのため肩が上がりきらない状態。加えて、左肩鎖関節(鎖骨の外側端)に可動制限があり、肩甲骨の動きも制限されていました。これらの所見から、右側は筋緊張性の肩こり、左側は四十肩様の関節拘縮を伴う障害と判断しました。
【治療内容】
初回治療では、胸椎全体の可動性を回復させるための脊椎矯正を行い、第3頚椎にもアジャストメントを加えて首から肩への神経伝達と血流を改善しました。左肩鎖関節にはモビリゼーションを行い、固まっていた動きを回復すると同時に、肩甲骨周囲筋の動きを滑らかにしました。これにより肩の可動域が改善し、動作時の痛みが減少。
右肩の僧帽筋に対しては、持続的な筋膜リリースを行い、過剰な緊張を緩めることで血流改善と疲労物質の排出を促進。治療直後、左右の肩の痛みは大幅に軽減し、腕の動作もスムーズになりました。初回終了時点で痛みは半減し、3回目の治療後には腕のだるさもほぼ消失。患者様は仕事後の肩の重さをほとんど感じなくなったと報告されました。
【解説】
今回の左右肩の同時症状は、原因が一つではなく、左右で異なるメカニズムによって起こっていました。右肩は長時間のデスクワークや看護業務による僧帽筋の過緊張が主体で、慢性的な筋肉疲労からくる典型的な肩こりのパターン。一方、左肩は四十肩に見られるような関節包や肩周囲組織の拘縮が関与しており、炎症後の硬さや動作制限が症状を生んでいました。
このように左右で異なる障害が同時に発症することは決して多くありませんが、看護師のように同一姿勢を長時間維持しつつ、突発的に重いものを扱う職種では起こりうる現象です。重要なのは、片側の症状だけに着目せず、それぞれの原因を見極めて別々にアプローチすることです。右肩の筋緊張は緩め、左肩の関節制限は可動域を広げる——この両輪で進めたことが、短期間での改善につながりました。
肩こりと四十肩は一見似た症状を示しますが、原因組織や治療方法は全く異なります。誤った自己判断で一方の治療法だけを続けても改善しない場合が多く、今回の症例はその典型と言えます。
担当カイロプラクター:鷲見光一
応用理学士(医科学)
カイロプラクティック理学士
グラストンテクニック®GTクリニシャン
日本カイロプラクターズ協会(JAC)正会員
都内カイロプラクティック院にて副院長を務めた後、2017年に独立。国際基準のカイロプラクティックだけでなくグラストンテクニックのライセンスを取得し、物理療法を駆使した施術法を確立。臨床歴20年以上のオーストラリア政府公認カイロプラクター。
監修者:鷲見弘
取得国家資格/鍼灸師、柔道整復師(接骨)、あん摩マッサージ指圧師
慶応大学卒業後、人体や自然界への探求心によりカイロプラクティックの道へ進む。ユニバーサル・カイロプラクティック・カレッジ、 中央医療学園鍼灸学科を首席として卒業後、JSK鍼灸カイロプラクティックを運営。音楽家の腱鞘炎等の演奏障害を得意分野とし、多くの著名ピアニストの治療を担当。






